緻密で再現性の高い画風で知られる諏訪淳は、しばしば写実絵画のトップランナーと目されてきた。しかしその作品を紐解いていくと彼は、「実在する対象を、目に映る通りに写す」という膠着した写実のジャンル性から脱却し、認識の質を問い直す意欲的な取り組みをしていることが分かる。
諏訪 敦 個展 府中市美術館

ごあいさつ(リーフレットより)
緻密で再現性の高い画風で知られる諏訪淳は、しばしば写実絵画のトップランナーと目されてきた。しかしその作品を紐解いていくと彼は、「実在する対象を、目に映る通りに写す」という膠着した写実のジャンル性から脱却し、認識の質を問い直す意欲的な取り組みをしていることが分かる。
諏訪は、亡き人の肖像や過去の歴史的な出来事など、不在の対象を描いた経験値が高い。丹念な調査の実践と過剰ともいえる取材量が特徴で、画家としては珍しい制作スタイルといえるだろう。彼は眼では捉えきれない題材に肉薄し、新たな視覚像として提示していく。
この展覧会では、終戦直後の満州で病没した祖母をモチーフにしたプロジェクト《棄民》、コロナ禍の中で取り組んだ静物画の探究、そして絵画制作を通した像主との関係の永続性を示す作品群を紹介する。それらの作品からは、「観ること、そして現すこと」を問い続け、絵画制作における認識の意味を拡張しようとする画家の姿が、立ち上がってくる。
SUWA Atsushi 諏訪敦
眼窩裏の火事
府中市美術館
2022年12月17日(土)ー2023年2月26日(日)

Profile
1967年 北海道に生まれる。 1992年 武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース修了。 1994年 文化庁芸術家派遣在外研究員(2年派遣)に推挙、スペインに滞在。 2018年 武蔵野美術大学造形学部油画学科 教授就任
第1章 棄民
死を悟った父が残した手記を手がかりに、幾人もの協力者を得ながら現地取材にのぞみ、諏訪はかつて明かされてこなかった家族の歴史を知り、絵画化していく。敗戦直後、旧満州の日本人難民収容所で母と弟を失った、少年時代の父が見たものとは。
第2章 静止画について
コロナ禍のさなか諏訪は、猿山修と森岡督行の3人で「藝術探検隊(仮)」というユニットを結成し、『芸術新潮』(2020年6〜8月号)誌上で静止画をテーマにした集中連載に取り組んでいた。静止画にまつわる歴史を遡行し制作された作品の数々。そこには、写実絵画の歴史を俯瞰した考察が込められている。
第3章 わたしたちはふたたびであう
人間を描くとは如何なることか?絵画に出来ることは何か?
途切れることのない肖像画の依頼、着手を待つ制作途中の作品たち。時には像主を死によって失うなど、忘れがたい人たちとの協働を繰り返してきた諏訪がたどり着いたのは、「描き続ける限り、その人が立ち去ることはない」という確信にも似た感覚だった。
1999年から描き続けてきた舞踏家・大野一雄は2010年になくなってしまう。しかし諏訪はさらに、気鋭のパフォーマー・川口隆夫の協力を得て亡き舞踏家の召喚を試み、異なる時間軸を生きた対象を写し描くことの意味を再検討する。


画面から人間の内面が浮かび出てなんじゃ〜こりゃーと圧倒されるよ。
静物画の鮮度に感動しました。是非、迫力ある生の絵を鑑賞することをお勧めします。

本日も最後までご愛読ありがとうございました。
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