あなたの知らないモネが来る
イスラエル展の概要
約50万点の文化財を所蔵するエルサレムのイスラエル博物館は、印象派も珠玉のコレクションを誇ります。本展は同館から、印象派に先駆けたクールベ、コロー、ブーダン、そしてモネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、この流れを発展させたポスト印象派のセザンヌ、ファン・ゴッホ、ゴーガン、さらに印象派の光と色彩の表現を独特の親密な世界に移し変えたナビ派のボナールやヴュイヤールの作品69点を厳選、うち59点が初来日の名品の数々とともに、印象派の光の系譜をたどります。
なかでも、睡蓮の連作で有名なモネの《睡蓮の池》は、特に「当たり年」と評される1907年に描かれたものです。この画家全盛期の作品を含めた出品作の大半が、日本初公開となります
イスラエル博物館(エルサレム)について
イスラエル博物館(エルサレム)について
地中海に面する中東の国・イスラエル最大の文化施設であり、世界有数の芸術・考古学博物館として年間およそ92万人が来場しています。1965年に設立された同館は、60,705㎡(15エーカー)の広大な敷地に、先史から現代までの幅広いコレクションを多数展示しており、数日かけても見切れないほどです。
2,000年前の世界最古の聖書「死海文書」を所蔵する「死海写本館」や、イサム・ノグチによって設計された第二神殿時代のエルサレムを再現した「ビリー・ローズ・アート・ガーデン」も人気のスポットです。国内外からの比類なき寄贈による50万点に及ぶ所蔵品には、本展でご紹介する印象派とポスト印象派の豊かで包括的な傑作コレクションも含まれています。
三菱第一美術館までの道のり
イスラエル博物館印象派展
3つの見どころ
- 日本初!イスラエル博物館が所蔵する印象派の名品選
- 印象派の光の系譜をたどる珠玉(しゅぎょく)の作品群
- モネ、ファン・ゴッホ、ゴーガンetc 画家たちのピーク時の傑作が一堂に
展示構成
- 【CHAPTER 01】 水の風景と反映
- 【CHAPTER 02】自然と人のいる風景
- 【CHAPTER 03】都市の情景
- 【CHAPTER 03】人物と生物
移ろいゆく自然の瞬間をとらえた印象派は、工業化と都市化が進む19世紀後半のフランスで活躍しました。
当時の画壇において権威を誇ったアカデミーのヒエラルキーでは下位に位置付けられていた風景や室内、近代的な
日常生活など、身近な主題を好んで描きました。
続くポスト印象派は、印象派の主題を踏襲しながらも、独自の表現を達成しました。
本章では印象派の画家が特に好んだ、水と水鏡の反映を通して、印象派の風景表現の特質を浮き彫りにします。
睡蓮の池
クロード・モネ
1907年
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
風景
レッサー・ユリィ
190年
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
小さな柵へと続く道
モルトフォンテーヌ
1890年
油彩/板
イスラエル博物館
樹々の間に差す陽光
ジャン=パティスト・カミーユ・コロー
製作年不明
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
岩のある風景
ギュスターブ・クールぺ
1902年
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
花咲くリンゴの木
シャルル=フランソワ・ドービニー
1860年-1862年
油彩/
イスラエル博物館
豊作
カミーユ・ピサロ
1872年
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
朝、陽光の効果、エラニー
カミーユ・ピサロ
1872年
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
陽光を浴びたエスタックの朝の眺め
ポール・セザンヌ
1882-年
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
湾曲した道にある樹
ポール・セザンヌ
1882-1883年
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
麦畑とポピー
フィンセント・ファン・ゴッホ
1888年
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
プロヴァンスの収穫期
フィンセント・ファン・ゴッホ
1888年
油彩/カンヴァス
イスラエル博物館
1850年代半ばに活躍したバルビゾン派をはじめとするフランスの風景画家たちは、
風のそよぎ、梢(こずえ)の揺らぎといった、自然のささやかなエピソードに画趣(がしゅ)
を見出しました。
印象派の画家たちは、バビルゾン派が得意とした身近な自然の営みの表現とともに、
野外での労働という主題も受け継ぎながら、セーヌ川やオワーズ川の流域にモティーフ
を求めました。
印象派の主題は、ポスト印象派も継承しました。
本章では自然、そして人のいる風景を取り上げます。
バビルソン派の風景画家たちは、冬になると村を去理、都会で生活していましたが、
街を主題とすることはほとんどありませんでした。
対照的に印象派とそれに続く画家たちは、しばしば都市景観そのものを描き出しています。
作家のエミール・ゾラは、「先人たちが森や川の詩を発見したように、今日の画家たちはいま、
鉄道駅の詩を発見せざるを得ない」と述べました。
本章ではゾラが指摘した変化を敏感に取り入れた印象派と、その後継者たちが描き出す、
都市の容貌を展開します。
印象派は、同時代の人の表情、しぐさなど、日常生活の何気ない瞬間までもとらえようとしました。
かつて詩人のポードレールが、日常生活のさりげない表現を「造形的スラング(俗語)artgot-plastque」
と名付け、アカデミーの芸術家が追求した堅苦しい公的表現との差異化を図ったことが
想起されます。日常の瞬間を切り取る印象派の特性は、ポスト印象派にも受け継がれ、
肖像画そして静物画においても、日々の暮らしを表現することが好まれました。
コメント