宇宙ステーション周りの船外活動を颯爽と行う
かっこい宇宙服に身を包んだ宇宙飛行士。
一般の我々には想像もつかない過酷なトレー
ニングを重ねているからこそ、このような
極限状態でも冷静に作業している
宇宙飛行士はやはりスーパーすごい!
でも、主役はもうひとりいたのです。
宇宙飛行士の生命維持だけでなく、
孤立無援な宇宙空間でパートナーとして
様々なサポートをする宇宙服。
その特殊な環境に適応するため長年培ってきた
技術の結集。開発者と宇宙飛行士が一体とな
って創意工夫と改善を繰り返してきた宇宙服
について、そして進化の歴史を学んで行きま
しょうきっと新しい発見があると思います。
宇宙服を勉強するに主にJAXAのサイトを参考にさせていただきました。ありがとうございました。
宇宙服とは
宇宙ステーションの外で船外活動するため、
宇宙飛行士はEMUスーツと呼ばれる
白い宇宙服を着て、危険かつ難しい
ミッションをしています。
かっこいいですね。
このEMUスーツには、内部に酸素タンクや
バッテリーなどが内臓されていて、
完全に宇宙ステーションから独立しても
大丈夫なように宇宙飛行士の生命を守る
機能がふんだんに備わっています。
この宇宙服のシステムは、とても宇宙空間
ならではの特殊で且つ効率的な設計になって
いて、その素晴らしいアイデアに感心させ
られます。
例えば、EMUスーツは、人間の体を真空から
守るためにデザインされています。
そのため、気密になっていますが、内部が
空気で与圧されると風船のように膨らんで
しまい、手足を自由に動かすことができなく
なるのを防ぐために、肩や肘、手足などの
関節ぶぶんは金属製で与圧しても膨らまず、
曲げ伸ばしができるよう設計されています。
ただし、胴体と腰部分は金属製ですが。
手足の関節以外の『布地』の部分が、宇宙
ステーション外壁の尖った構造物に引っか
かって破れないよう、気密性素材の外層
は、MLI(Multilayer Insulation)
という特殊で丈夫な布地で守られています。
『Insulation』というのは『断熱』という意味で、このMLIという布地は、
日が当たっていると極端に熱くなり、日陰に入ると極端に寒くなる宇宙の
温度環境から、宇宙飛行士の体温を守ってくれる機能もあります。
体温を守ることに関しては、宇宙飛行士は細い管が張り巡らされた冷却下着を
身につけます。宇宙服から供給される冷たい水が、この細い管の中をぐるぐる
巡り、暑い日中でも快適に作業することができるのです。
逆に、日陰で寒くなった場合には、この冷却下着を通る水の量を減らしたり
止めることができますし、手が悴んでしまわないように、手袋には小さなヒーター
も内臓されています。
宇宙服を着ている宇宙飛行士が呼吸するのは、100%の酸素です。
このため、普通の空気を使うより、宇宙服の内部の圧力を低くすることができます。
圧力が低ければ、手や足を動かすのも楽です。
宇宙飛行士は酸素の一部を体に取り込んで、代わりに二酸化炭素を吐き出しますが、
宇宙服の内部のガスを循環させて、有害な二酸化炭素を除去し、使ったぶんだけ
少しずつ、内部タンクから酸素を供給するので、最大で8時間くらい宇宙空間で
活動することができます。
宇宙服の目的
・宇宙空間で、唯一人間が生存できるのが、宇宙服の中。
生命維持できる空間を提供しながら、船外活動も可能にする
機動性を備わってなくてはなりません。
万が一のことがあってはならないため、
安全性を幾重にも重ねて重厚な作りになっているのです。
特殊環境である宇宙空間
宇宙空間はまず空気がほとんどなく、寒暖の差が下の図のように−150℃〜120℃と大きい
過酷な環境であることを認識しなくてはなりません。
宇宙服の分類
宇宙服には大きく2種類、船内で着用する与圧服と、船外活動時の宇宙服があります。
下の写真のオレンジが与圧服で、後ろの白い宇宙服がEMUとなります。((1997 年 8 月 後列右の方が土井隆雄さん)
宇宙往還時に船内で着用される
宇宙飛行士の特別なスーツ(与圧服)
宇宙飛行士が宇宙船に乗り込む際に着用します。
このスーツは今では当たり前になりましたが、
1986年のスペースシャトル『チャレンジャー号』の事故以来、
クルーが緊急脱出できるようにパラシュートも備えたオレンジスーツを
着用するようになりました。このオレンジスーツの重量は、パラシュート
含めて約43kgになっています。
そして、1988年にLES(Launch and Entry Suit)
がデビューしました。
皆さんご存知のオレンジの服ですね。
その後、LESが改良され、より動きやすく、軽いACES
(Advanced Crew Escape Suit)を開発し、1994年初飛行しました。
石油採掘のプロ集団が地球を救った映画『アルマゲドン』を思い出します。
一方、ロシアのソユーズ宇宙船に搭乗する際は
ソコル宇宙服が使用されています。
こちらは、白とブルーで爽やかな印象でいいですね。
このソコル宇宙服はお腹の袋部分から内部に入って着用するのが特徴。
最後に袋を束ねて紐で縛ることで機密を保ち、表面生地のジッパーを閉じて着用完了です。
余談ですが、大気圏突入時のGは、ソユーズ宇宙船の場合で通常4〜5G、最大10〜12Gもかかります。
そこで地球に帰還するソユーズ宇宙船では、着地時の衝撃に耐えるために各クルー専用に作られたシートを
使用。クルーごとに石膏で型取りをすることで体にフィットするシートをオーダーメードし、
衝撃が一部に集中しないように工夫が施されています。
そして、2020年、民間の宇宙船クルードラゴンの打ち上げでは
最新の船内与圧服が使用されました。
なんと、3Dプリンターで作られたヘルメットやタッチスクリーン
にも対応したグローブなどデザインが一新されています。
もうSFの世界ですね。未来感満載です。
過酷な環境から身体を守る、
船外活動のための高性能スーツ
船外活動(EVA)を行う際には、真空や熱、紫外線など、
宇宙の厳しい環境から宇宙飛行士を守るために様々な
機能を持った船外活動用の服が必要になります。
ISSでは、アメリカが開発した船外活動ユニット(EMU:Extravehicular Mobility Unit)
とロシアのオーラン宇宙服が使用されています。
宇宙服の機能
- ・気密性・気圧の調整
- ・動きやすさのサポート
- ・酸素の供給
- ・二酸化炭素の除去
- ・体温の調節
- ・安全の防護
- ・外部との通信
アメリカの船外活動ユニット(EMU)の持つ機能
EMUha宇宙服アセンブリと生命維持システムの2つの部分から構成されており、その重量は約120kg。
宇宙飛行士に安全な呼吸環境を提供するとともに、体温の保持、有害な紫外線、宇宙線や微小な宇宙塵から
体を守る役割を果たします。EMUは約7時間の船外活動ができるよう設計されていますが、酸素の消費量には
個人差があるため、実際にはもう少し長時間の作業が行われる場合があります。勿論、酸素消費量等は
モニターされ、安全重視で任務を全うしています。
アメリカの船外活動ユニット(EMU)は上部胴体、下部胴体、グローブ、ヘルメット、冷却下着、生命維持装置、通信装置などの部品から構成されています。
上部胴体、下部胴体、グローブ、ヘルメットで全身を覆い、中に酸素を満たして宇宙の真空から身を守ります。宇宙服は気密、断熱などのためにナイロン、ダクロン、アルミ蒸着マイラー(ポリエステルフィルム層)、ゴアテックス/ノーメックスなどから成る14層もの布地からできており、内部気圧は0.3気圧となっています。
素肌に着用する冷却下着は長さ84mものチューブを縫込んだ下着で、チューブに水を流して体温が上昇するのを防ぎます。
生命維持装置は呼吸により排出された二酸化炭素を取除いて酸素を供給するとともに宇宙空間に熱を逃すラジエータの役割も果たします。
宇宙飛行士は通信装置によりペアを組んで行うEVAクルーやISS内のクルー、あるいは地上の管制官と話すことができます。
そして7時間以上にもおよぶことがある船外活動中、トイレには行けないためおむつを使用します。
オーラン宇宙服
オーラン宇宙服は1971年の使用開始から改良を重ねながら、現在に至っています。
宇宙服アセンブリと生命維持システムという構成はEMUと同じですが、オーラン宇宙服はそれが一体化
されていることが特徴です。背面にある開口部から宇宙服アセンブリ内に入ることで、一人で装着できる
ようになっています。また、内部気圧がEMUの0.3気圧よりも高い0.4気圧に設定されているので
船外活動をしたクルーが宇宙服を着る際、体内から窒素を追い出すために必要な『プリプリーズ』と
呼ばれる待機時間が約30分とEMUと比較し短くなっています。
オーラン宇宙服(Orlan Spacesuit)は、ロシアが開発した、船外活動中の宇宙飛行士の生命維持装置です。オーラン宇宙服は、内部気圧が約0.4気圧とEMUに比べて高めのため、船外活動クルーが宇宙服を着用後、体内から窒素を追い出すために要するプリブリーズと呼ばれる待機時間が約30分と短くなっています。
宇宙服の歴史
宇宙服の歴史
世界最初の宇宙服は、1931年にロシアによって開発されたそうです。
それから現在に至るまで、長い歴史の中で、宇宙服も進化してきました。
その経過を見ていくと、私たちでも宇宙に行ける時代に、どんな
宇宙服を着るのだろうとワクワクしてきます。
その前に、宇宙服の歴史を学んでいきましょう。
宇宙服の原型である世界初の与圧服はソ連で生まれたとされており、
1931年にソ連のエヴィげニー・チェルトフスキーという人物画開発したそうです。
実用化されたのは1965年3月に行われた世界初の船外活動であり、アレクセイ・レオーノフが
ボスホート2号からの仕事を遂行するために宇宙服を着用したそうです。
1961年にユーリー・ガガーリンが人類で初めて宇宙に到達しました。
それから、約60年間経っていますが、現在使われている宇宙服は、
アポロ時代(1960年代)の技術がベースのため、
今日の最新技術からすればかなり古い技術が基礎になっているのです。
マーキュリー・ジェミニ・アポロ時代の宇宙服
マーキュリー計画時代
1958年から1963年にかけて、アメリカ初の有人宇宙飛行プロジェクト『マーキュリー計画』が
実施されました。その際、使用された宇宙服は、航空機パイロットの与圧服をベースに、アルミなどを
加え、強度や高低温への耐性を上げています。
ジェミニ計画時代
1965年から1966年までの間、10名のアメリカ人宇宙飛行士が地球周回低軌道を飛行士そた
『ジェミニ計画』では、船外活動を行うために大きく改良。宇宙服と宇宙船をホースで繋ぐことで
呼吸気を送れるようになりました。しかし、実際に船外活動をすると体温が上昇し、激しく披露して
しまうことが判明。また、湿気でヘルメット内部が曇り、宇宙船から呼吸気を送るだけでは宇宙服を
十分に冷却できないことが課題となりました。
アポロ計画
1960年代から1970年代初頭に実施された、月面に人類を送るプロジェクト『アポロ計画』では、月の表面を自由に
動けるように更に技術革新が進みました。手袋の指先をゴムにし、空気・水・電池などを入れる携帯型のライフサポート・
バックパックも開発。宇宙服とバックパックの総重量は82kgもありますが、重力が微小な月面では約14kgまで少なく
なります。この時代の宇宙服は空冷ではなく、ナイロンの下着と水を使って宇宙飛行士の体を冷やすというもの。自動車
のラジエーターでエンジンを冷やすのと同じ仕組みが採用されていました。
宇宙服のお値段
気になる宇宙服のお値段ですが、
1着約10億円と言われています。
世界で最も高い服ですね。
その内訳は宇宙服アセンブラ部分が約1億、生命維持装置が9億だと言われています。
全て同じサイズではなく、宇宙飛行士の体格にピッタリ合わせてパーツパーツを制作する
必要があるため、よりコストが掛かっているようです。
ちなみに宇宙飛行士が全員着用しているグローブも、全てオーダーメイドで
グローブ1つで220万円すると言われています。
これからの宇宙服開発
これからの月・火星探査に向けて、NASAをはじめ、大学や企業の研究機関では、次世代の宇宙服の
研究・開発が進んでいます。
宇宙服には高度な技術が投入されており、費用的にも高価なものです。
しかし、将来宇宙ステーションの活動が始まる頃には、今よりも安価で機動性に優れた宇宙服に
改良されていくでしょう。
各メーカーの宇宙服比較
各メーカーの宇宙服比較
Virgin Galactic社
アンダーアーマーとコラボレーションした宇宙服を披露しました。
コメント