前川貴行 写真展
「生き物たちの地球」
富士フイルムフォトサロン東京 2022 7.29Fri-8.18 Thu
富士フイルムフォトサロン名古屋 2022 11.4Fri-11.10 Thu
富士フイルムフォトサロン札幌 2023 3.31Fri-4.5 Wed
富士フイルムフォトサロン大阪 2023 7.28Fri-8.9 Wed
ごあいさつ
本展は、動物写真家 前川貴行氏が朝日小学生新聞(朝日学生新聞社発行)に連載中の「生き物たちの地球」をもとにした企画展です。同連載で紹介された世界各地の野生動物を中心に、生命とそれを取り巻く自然の姿を美しい銀写真プリントで体感していただくものです。 前川氏は日本を含むアジア、北米、中米、アフリカ、オセアニアなど、地球上の多種多様な環境に身を置き、そこに生きる動物たちの姿を見つめてきました。自然を人間本位の物差しで測ることなく、動物との対等な関係性を意識し撮影された作品は、時には驚くほど無邪気な表情やしぐさを捉え、またある時には圧倒的な迫力を持ち、見る者に強い印象を残します。
本展は、この地球は誰のものでもなく、人間を含めた生き物たちが影響を与え合い、つながり合って暮らす多様性の場であることを伝えるものです。本展をきっかけに人間の視点だけではなく「生き物側の目線」からも近年関心が高まっているSDGsや生物多様性について、子どもから大人まで考えるきっかけにしていただければ幸いです。 フジフイルムスクエア
前川貴行 | Takayuki Maekawa
1966年、東京都生まれ。動物写真家。エンジニアとしてコンピューター関連会社に勤務した後、26歳の頃から独学で写真を始める。1997年より動物写真家・田中光常氏の助手を務め、2000年よりフリーの動物写真家としての活動を開始。にほん、北米、アフリカ、アジア、そして近年は中米、オセアニアにもそのフィールドを広げ、野生動物の生きる姿をテーマに撮影に取り組んでいる。
「情熱大陸」(TBS)、「ワイルドライフ」 (NHK -BS)などに出演するほか、動画撮影、写真展、写真集などさまざまなメディアで作品を発表している。近著に『生き物たちの地球1』(朝日学生新聞)、『しまふくろうの森』(あかね書房)、『ハクトウワシ』(新日本出版社)、『SOUL OF ANIMAL』(日本写真企画)などがある。2008年日本写真協会賞新人賞、2012年第1回日経ナショナルジオグラフィック写真賞グランプリ受賞。公益社団法人 日本写真家協会理事。
生き物たちの地球
下北半島の突端に、寒立馬(カンダチメ)とよばれるの野放し馬が約40頭、ときどき人の世話を受けながら暮らしています。寒立とは、カモシカが雪の中でりんと立つ姿をあらわすマタギ(猟師)の言葉です。生まれたての赤ちゃんは、30分後には歩き始めます。これは外敵から身を守るための本能。そのたくましさはおどろくばかりです。
アザラシを主食とする、地球上で最大の肉食動物。特にオスはすごい迫力です。母グマは子どもたちに深い愛情をかたむけます。寒さのきびしい極地では、母グマがいなければ、飢えと寒さで子グマはすぐに死んでしまいます。大人のオスにおそわれ、食べられてしまうこともあります。だからなのでしょう、母グマは子どもたちを大切に守り育てます。
アフリカにすむ2種類のサイのうち、シロサイにくらべてクロサイは体が少し小さく、性格ははげしくて、おこりっぽいです。車に乗っていてもあまり近づきすぎるとおこって突進してきます。ツノは薬や短剣の持ち手として使うために多くのサイが乱獲されてきました。それは今でも続いています。世界中にすむ5種類のサイは、ともに絶滅が心配されています。
アフリカの草原でよく見かける動物です。ふだんは草や木の実、昆虫などを食べますが、たまにガゼルやインパラなどの赤ちゃんをおそうこともあります。その反対に、ヒョウやハイエナといった肉食獣に食べられてしまうことも多いです。ニホンザルと同じオナガサルの仲間で、毛づくろいはかれらにとって、重要なコミュニケーションです。
ヒグマの仲間、グリズリー。名前とちがって茶色です。クマにとってサケは、とても大切な食べ物です。豊富な時期には、頭や卵など美味しく栄養分の高いところだけを食べて身を放り出したりもします。その残りを他の動物や鳥たちが食べ、さらに残ったものは土にかえって森の養分となります。健全な自然は、命がむだにならない仕組みにできているのですね。
英語でアトランティックパフィンともいいます。海にもぐるのがとくいで、水中でイカナゴやシシャモをつかまえて巣穴に持ち帰り、ヒナにあたえます。空を飛ぶ時はバタバタとさわがしく、少々ぶかっこうです。一生けん命とってきた魚をカモメに横取りされてしまうこともあります。子育ての時以外は、ずっと海の上にうかんで生活しています。
車で走っている時、草原にオスが5頭ほど集まってくつろいでいるのを見つけました。オスのツノは太く大きくねじれ、メスのツノは小ぶりでゆるやかな曲線をえがいています。りっぱなツノを画面いっぱいに入れようと、望遠レンズをかかえてそっと近づき少しずつ距離をつめます。最後には10mほどまで近づいてシャッターを切りました。
ヒョウが枝の上で寝ていました。少しはなれた場所に、食べかけのガゼルがぶら下がっています。ライオンやチーターなどより小柄で、ほぼ単独で行動するヒョウは、えものを取られないよう木の上に引っ張り上げ、ゆっくりと食べます。身のこなしも優雅で、気高ささえ感じるヒョウ。簡単には出会えないというところもまた、大きな魅力です。
ジャングルで親子に出会いました。しばらくすると母親がぼくの服を引っ張ったり、かみの毛をさわったりしてきました。ぼくはおとなしく、されるがままにしました。オラウータンは大型類人猿という種類で、ぼくらと同じ人科の仲間です。昔にくらべるとジャングルの面積がヘリ、絶滅が心配されています。地元の人は「森のひと」とよび、大切にしています。
首が長く、ほっそりとした体つきをした、ネコの仲間です。オレンジがかった体毛に変化にとんだ黒いはん点がちりばめられています。かすかな音も聞きのがさない丸くて大きな耳で、周りの様子を察知します。えものを見つけると、3〜4mはなれたところからでも一気にジャンプしてつかまえます。ジャンプ力の強さは、ずば抜けたものがあります。
赤ちゃんはスイカやシマウリのようなシマモヨウからウリボウとよばれています。子育てはとてもきびしく、母親は気が乗らないとおちちをあげないし、ウリボウが見つけた食べ物を横取りしたりもします。成長できるのは約10頭のうち2〜3頭。もしすべてのウリボウが成長できたら、この山の食べ物は足りなくなるかもしれません。これも自然の法則なのでしょう。
アシやパピルスが生いしげる湿地帯。カヌーでゆっくり近づくと、するどい目つきでぼくを見ています。大きなくちばしは、まるで化石になった靴のよう。じっと動かない鳥として有名ですが、それはマンバという肺魚が呼吸をしに水面にあらわれるチャンスを待ち続けているためです。絶滅が心配されていますが、ここヴィクトリア湖畔は希少な生息地です。
インドではよく見かけるオナガザルの仲間。頭からおしりまでの長さが40〜80cm、尻尾の長さは70〜110cmほど。長いしっぽでバランスを取りながら、高い木の上を自由自在に動き回ります。多くは森や草原に住んでいますが、村や草原にすんでいますが、村や町の中で見かけることもあります。ハヌマンとはインドの昔話に出てくるサルの神様で、ウシと同様に聖なる生き物とされています。
日本に生息する島としては、最大級の大きさのタンチョウ。江戸時代には北海道各地に数多くいて、関東地方にもわたっていたそうです。しかし乱獲や生息地の開発などによって大正時代にはわずか10数羽ほどに。けん命な保護活動によって、現在の生息数は1,500羽をこえましたが、絶滅危惧種には変わりなく、生息地も限られています。
チーターは地球上で一番足の速い生き物です。ガゼルやインパラ、イボイノシシなどの草食獣にできるだけ近くまでしのびより、短距離から一気にとらえます。草食獣はチーターほど早く走れませんが、その分長距離を走るのは得意です。チーターがあきらめるまで走りきれるかが勝負です。生き物たちはみな、それぞれ得意なことで生きのびているのですね。
赤茶色でボサボサの毛皮をまとい、ずんぐりとした体つき。イエネコぐらいの大きさのリスの仲間です。メスよりおすの方が大きく、冬は半年以上、岩のすき間の奥深くに作った巣穴で冬眠します。この個体はおそらく冬眠します。この個体はおそらく冬眠から出てきたばかりなのでしょう。動きもけっこうすばやくて、走るスピードもなかなかのものです。
ぼくは英名の「カリブー」というよび名を使います。春をむかえると小さな群れが旅の途中で合流をくり返して数万頭の大群となり、子育ても行いながら北へと大移動します。小さな飛行機で空からさがすと、遠くからはゴマつぶのように見えました。大群をたどって飛び続けるうちに海に出ました。北極海です。地球のてっぺんがカリブーたちの終着点です。
アフリカの草原に群れでくらすウシの仲間です。ケニアから南アフリカまで、雨季と乾季に合わせて、生い茂る豊富な草を求め、行ったり来たりします。その移動距離は1,000km以上にもなるほどです。川をわたる時は、大群がじっと様子をうかがい、一頭が飛び込むと他のヌーたちも次から次へと飛び込みます。その光景は力強く、圧倒されます。
体重が900kg以上にもなるバイソン。かつて6,000万頭ほどいたとされますが、1900年ごろには数百頭にまで激減しました。ヨーロッパからの入植者たちが、先住民のネイティブ・アメリカンを支配するため、かれらの主要な食糧であるバイソンを殺してしまったからです。その後は保護政策が取られ、今では数が回復して、絶滅危惧種からも外されました。
現在、世界に生息するトラは3,000頭以下で、その半数がインドにいると考えられています。生息地の減少や密猟などによって絶滅への道をたどっています。ジャングルの中を朝から夜まで車で走り回ってもなかなか見つけることができません。何日もかかってようやく出会えた近くで見るトラは、大きくて迫力があり、とても美しい生き物でした。
ゴリラは大型類人猿(ヒト科)の中で最も体が大きいです。最初は、こわい生き物かもしれないと思いましたが、それはまちがいでした。とてもおだやかな性格で、争いを好まず、子どもはぼくにじゃれついてくるほどです。その見た目から、かつて凶暴な生き物としてたくさん殺され、絶滅寸前になったゴリラ。今では世界中の人たちが協力して、ゴリラを守っています。
ものがあることは、それだけで十分幸せです。まずはそこに気づき、「当たり前」を「ありがとう」に変えましょう。
地球に生きている仲間を身近に愛おしく感じた貴重な写真展でした。
本日も最後までご愛読ありがとうございました。あなたの幸せ願っています。
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