ハリー・ポッターと魔法の歴史
世界的人気を誇るファンタジー文学「ハリー・ポッター」。この魔法の世界の成り立ちの背景には、魔術や呪文、占い、錬金術、天文学などに関して、人類が何世紀にもわたって記述してきたさまざまな書物や資料が存在します。パピルスに記された古代ギリシャの魔法の手引書から、レオナルド・ダ・ヴィンチの天体に関する手稿、魔女やセイレーンを描いた絵画、原作者J.K.ローリングの直筆原稿やスケッチまで、大英図書館の所蔵品を中心に選び抜かれた貴重な資料の数々で、魔法の歴史をひもとき、「ハリー・ポッター」の物語の秘密を探ります。大英図書館によって企画された本展は、2017年から2019年にかけてロンドンとニューヨークで好評を博し、ついに日本での開催が実現しました。この機会をどうぞお見逃しなく!
開催要項
開催日時
2021年12月18日(土) – 2022年3月27日(日)
10:00 – 18:00
※金・土曜日は20:00まで開館
※入館は閉館30分前まで
場所 東京ステーションギャラリー
展覧会の構成
世界的人気を誇るファンタジー文学「ハリー・ポッター」。この魔法の世界の成り立ちの背後には、魔術や呪文、占い、錬金術、天文学などに関して、人類が何世紀にもわたって記述してきた様々な書物や資料が存在します。パピルスに記された古代ギリシャの魔法の手引書から、レオナルド・ダ・ヴィンチの天体に関する手稿、魔法やセイレーンを描いた絵画、原作者J.K.ローリングの直筆原稿やスケッチまで、大英図書館の所蔵品を中心に選び抜かれた貴重な資料の数々で、魔法の歴史を紐解き、「ハリー・ポッター」の物語の秘密を探ります。大英図書によって企画されたほんてんは、2017年から2019年にかけてロンドンとニューヨークで好評を博し、ついに日本での開催が実現しました。この機会をどうぞお見逃しなく!(東京ステーションギャラリー)
目次
第1章 旅 The Journey
1990年6月、出発が遅れたマンチェスター発ロンドン行きの列車の中で、J.K.ローリングにあるアイデアが浮かびました。それは、くしゃくしゃの黒髪の、眼鏡をかけた、額に稲妻形の傷跡があるハリー・ポッターという魔法使いの少年が登場する物語でした。彼女はその後5年以上かけて、シリーズ全7巻の構想を立てていくのですが、その多くは紙の切れ端に手書きで書いた大量のメモの山でした。第一巻の『ハリー・ポッターと賢者の石』は、1997年、ブルームズベリー社から出版されることになりました。初刷はわずか500部でしたが、これは新人作家による児童文学書としてはごく当たり前の部数でした。しかし、本書は瞬く間に子供から大人まで広く人気を博し、J.K.ローリングの人生を一変させ、そして、児童文学の出版史を永久に塗り替えたのです。
イラスト版『ハリー・ポッターと賢者の石』の表紙を飾った作品の習作。魔法魔術学校の新学期へ向かう生徒たちがホグワーツ特急に乗り込む様子が書かれています。
第2章 魔法薬学 Potions
薬を調合することは、魔術において必要不可欠な技術です。また、化学や医療が発展する近代以前は特に重要とされました。薬を意味する英語「potion」は、「飲み物」を意味するラテン語「potio」に由来します。薬は、病を治したり、人の外見を変えたり、あるいは恋に落ちるように仕向けたりすることに利用されてきました。魔法薬学はホグワーツ魔法魔術学校の必須科目でありますが、ハリーに取っては必ずしも好きな科目ではなかったようです。良い加減な薬の調合は避けるべきですが、うっかり毒を盛られた時に備え、ベゾアール石は常に携帯しておくと良いでしょう。
第3章 錬金術 Alchemy
錬金術は化学に先んじた古代の技術です。その究極の目的は、ありきたりの金属を金に変え、また、永遠の命が得られる不老不死の薬を作ることができる秘密の方程式を導き出すことにあります。「賢者の石」を作り出すことは、その目的を果たすと同時に、精神世界への深い理解を錬金術師に持たすことであると考えられていました。「賢者の石」の発想は、時代を超えて人々を虜にしてきました。ホグワーツでは、上級生の限られたグループのみが錬金術を学ぶことができます。ハリーと仲間たちの最初の冒険では、ヴォルデモートの手から「賢者の石」を守ることが極めて重要な使命でした。
第4章 薬草学 Herbology
薬物学では、植物と、その魔法の用途や正しい栽培方法を学びます。植物は魔法薬の材料として特に有用であり、歴史的にはその薬効が非常に重要とされてきました。ヘルボルス、ハナハッカ、マンドレイクなどはホグワーツの授業で生徒たちが学ぶ植物ですが、実際のじてんなどにも薬草として載っています。その多くは、治療薬として利用されますが、ホグワーツの温室には危険な植物もあるので、保護用のドラゴン革の手袋とふわふわの耳当ては必需品です。
第5章 呪文学 Charms
呪文を意味する英語「charm」は、歌やおまじないを意味するラテン語「carmen」に由来しますが、今日では意味が異なり、身につける者を守ってくれる魔除けや護符を指すこともあります。J.K.ローリングが創造した魔法の世界における呪文とは、呪文の言葉を唱え、正しく杖を振るという合わせ技を意味します。ホグワーツでは、例えば、鍵のかかった扉を開ける呪文(アロホモーラ)や、ものを宙に浮かす呪文(ウィンガーディアム レヴィオーサ)などを学びます。さて、魔女には箒がつきものであると言われていますが、魔女たちにとって箒は、空を飛ぶことを可能にする魅力的な道具です。この章では、本物の箒や、箒に乗る19世紀の魔女の図などをお見せします。
第6章 天文学 Astronomy
人類は、何世紀にも渡って夜空の不思議を解明しようと試みてきました。現在では、私たちの生きるこの世界について、どのようにして今の状態になったのか、天文学はその理解を深めるために役立っています。歴史的には、まだ見ぬ未来についての手がかりを得るための希望をもって、人類は空を見上げてきました。星や彗星は、これから起こる出来事の兆しとして輝いています。「ハリー・ポッター」の世界では、天文学は重要な科目としてホグワーツで教えられています。さらに、J.K.ローリングは登場人物の名前をつける時に天文学を取り入れており、ハリーの友人ルーナ・ラブグッドは古代ローマの月の女神、ハリーの名付け親であるシリウス・ブラックは夜空をもっとも明るい星と同じ名前を持っています。
第7章 占い学 Divination
占いとは、未来を予測するための技術です。何千年の間、様々な方法が試行錯誤されてきました。占い師たちは、時に馬鹿にされたり、ペテン師と非難されたりすることもありました。周囲から理解されることが難しいこの仕事に従事する彼らの多くは、儀式や専門的な道具を用いています。水晶玉、手相、タロット、そして茶葉占いなどは、現在でも比較的よく知られた手法です。「ハリー・ポッター」の世界では、占いは「魔法の中でも一番不正確な分野の一つ」と、マクゴナガル授業に一蹴されてしまいます。しかし、ハリーと思われる「7月の末に生まれる子供がヴェルデモートを打ち破る」という1つの予言が、物語に不可欠な重要性をもたらすのです。
第8章 闇の魔術に対する防衛術 Defence Against the Dark Arts
邪悪な力に対する盾として魔法を用いることは、世界中の多くの文化で見られます。黒魔術から持ち主を守るお守りは、通常「邪眼」ー魔術師が視線に込めたとされる呪いーを避けることが目的であり、狼人間、河童、バジリスクなどの暗黒生物に対する防御も期待されました。J.K.ローリングが創り出した世界での究極の悪とは、最悪の場合は人殺しのために「許さざる呪文」を使うことです。ホグワーツでは闇の魔術に対する防衛術の教師が1年以上仕事を続けられないのは、ポスト自体が呪われているからという噂が生まれました。
第9章 魔法生物飼育学 Care of Magical Creatures
動物に関する古い本の中には、「動物寓話集」として知られているものがあります。そこには、一角獣(ユニコーン)、不死鳥(フェニックス)、竜(ドラゴン)など様々な神話上の生き物が、ゾウのような身近な種と並んで載っていました。これら初期の動物の手引書の中には、人間の頭、ライオンの体、鳥の翼を持つスフィンクスのように、いくつかの異なる種が混交した合成動物が載っているものもあります。ホグワーツで魔法生物飼育学に秀でた生徒は、重要な教科書『幻の動物とその生息地』の著者ニュート・スキャマンダーのように、ゆくゆくは魔法動物学者になることができます。
第10章 過去、現在、未来 Past,Present,Future
20年以上前、「生き残った男の子」は初めて私たちの前に登場しました。ハリー・ポッターがこんなにたくさんの読者を魅了することになるとは、当時は誰にも想像することができませんでした。1999年に『ハリー・ポッターと賢者の石』に魅せられた日本の若い世代は、今、その子供たちと物語を共有することができます。現在では、「ハリー・ポッター」の本の不思議な魅力は、たくさんの言語に翻訳され、世界中の読者たちに楽しまれています。続編である舞台劇『ハリー・ポッターと呪いの子 パート1、2』は、2016年にロンドンで上演され、2022年には東京で封切られる予定です。同じく2016年には、映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの誕生』が上映されました。「ハリー・ポッター」と大英図書館に保存されてきた広範囲にわたる魔術の伝承は、大釜の爆発、魔法の向かい火、そして奇妙な生き物たちの話に影響を与え、今もなお、読者や観客を驚かせ続けているのです。
コメント